心のブロックとは


私たちが子ども時代に体験した出来事は、大人になってからの心の動きや人間関係に深く影響を与えています。

この影響は、無意識のうちに私たちの行動パターンや思考を制限してしまうことがあります。この「心のブロック」の正体は、過去の体験から生まれた「感情記憶」です。

ここでは、二つの具体的な例を通して、心がどのように過去の体験を処理し、その後の生き方を形作るかを見ていきましょう。


シチュエーション1:Yさんの場合(5歳)

外で働くお母さんを心待ちにしていたYさん。バスから降りてくるお母さんを見て、抱き上げてもらえると期待して走っていきました。しかし、お母さんはYさんの期待に気づかず、代わりに50円玉を渡しました。Yさんは、そのお金で大好きなポテトチップスを買いました。

🧠脳内の処理

  • 出来事:大好きなお母さんからの抱っこを期待したが、代わりにお金をもらった。
  • 右脳の感情:「失望」「悲しい」という感情を直感的にとらえる。
  • 左脳の分析:「欲しかったのは抱っこであって、お金ではない」と論理的に分析。
  • 心の結論:「お金=愛ではない」という、不快な感情と結びついた記憶(感情記憶)として心に刻まれる。
  • 行動:悲しみを慰めるために好物を買うという、感情と食べ物を結びつけるパターンが生まれる。

👩大人になったYさんへの影響

この「お金=愛ではない」という感情記憶は、大人になって「物質=愛ではない」という心のブロックへと拡大しました。

その結果、夫が多くのプレゼントをくれても、「物では愛情は測れない」という信念が働き、愛を感じにくいのです。心の奥では、形のない「だっこ」のような愛情を求めているため、いくら物が与えられても満たされません。

シチュエーション2:俊夫君の場合(4歳)

夜、具合が悪くて目を覚ました俊夫君は、両親に助けを求めに行きました。しかし、父親から「お母さんは疲れているから起こすな。早く戻りなさい」と厳しい口調で言われ、自分の部屋に戻りました。

🧠脳内の処理

  • 出来事:体調が悪い時に助けを求めたが、拒絶され、叱られた。
  • 右脳の感情:「見捨てられた」「悲しい」「怖い」という感情が湧き上がる。
  • 左脳の分析:「具合が悪いのに見捨てられた。僕は大切にされていない」と結論づける。
  • 心の結論:「僕のニーズに応えてくれない=見捨てられた」「自分は価値がない」という強い感情記憶が形成される。

👨大人になった俊夫君への影響

この「見捨てられる恐怖」という心のブロックは、大人になった俊夫君の行動を支配します。

  • 再び見捨てられることを恐れ、自分のニーズを控えめにしか表現できなくなり、孤立を深めてしまいます。
  • 婚約者に勇気を出して頼みごとをしたのに忘れられた時、過去の**「見捨てられた」**という感情記憶が呼び起こされ、過剰な怒りとして噴き出してしまいます。

心のブロックをそのままにしておくと、目の前の人間関係の小さなトラブルだけでなく、過去に抱えたつらい感情や記憶が原因で、同じような問題を繰り返してしまう「負のループ」に巻き込まれてしまいます。
たとえば、昔の傷ついた経験が無意識に心の中で反応し、今のちょっとした出来事でも過剰に不安になったり、相手を疑ったりしてしまう――そんな状態の繰り返しになってしまいます。


もし、あなたがある状況で理由もなく強い感情的反応をしてしまうとしたら、それは過去の感情記憶が反応しているサインかもしれません。

Yさんや俊夫君の例でも、親に悪意があったわけではありません。彼らが**「自分は愛されなかった」「価値がない」という思い込みを抱いてしまったことで、それが心のブロック**となり、現在の「生きづらさ」「不調」の原因になっているのです。

🚨「放っておくと、もっとつらくなるかもしれません」

「また同じような上司に当たってしまった…」「転職したのに、前の職場の方がまだマシだったかも…」

そんな思いをしたことはありませんか?

勇気を出して環境を変えても、気づけば似たような人間関係や状況に巻き込まれてしまうのは、あなたが無意識のうちに自分の中にある“心のパターン”に引き寄せられてしまうからです。

どんなに外側の環境を変えても、心の奥にあるブロックや思い込みがそのままだと、同じような出来事を繰り返しやすくなります。

この**“負のループ”から抜け出す**ために必要なのは、環境を変えることではなく、あなたの心のブロックに気づき、やさしく外していくことです。

あなたは決して悪くありません。

ただ、心の奥にある“見えない仕組み”に気づいていなかっただけ。その仕組みを整えることで、同じ悩みを繰り返さない未来をつくることができます。

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