――慢性痛と神経のブレーキの話
1.痛みが消えない本当の理由
前回お伝えしたように、
慢性痛は「壊れているから」ではなく、
脳がまだ警戒を解いていない状態です。
では、その警戒はいつ解除されるのでしょうか。
答えはシンプルです。
体が“安全だ”と感じたとき。
でもここで問題があります。
私たちは頭では
「もう大丈夫」と分かっていても、
体はそう感じていないことがあるのです。
2.安全の判断は“思考”ではなく“神経”がしている
体の安全を判断しているのは、
理屈を考える大脳皮質ではありません。
もっと原始的な、
自律神経システムです。
自律神経には大きく2つの働きがあります。
交感神経(戦う・がんばるモード)
副交感神経(休む・回復モード)
慢性痛が長く続く人の多くは、
がんばるモードが長期化しています。
いつも体に力が入っている
呼吸が浅い
眠りが浅い
休んでも抜けきらない
この状態では、
神経はこう判断します。
「まだ危険に備えておく必要がある」
すると、痛みの警報は鳴り続けます。
3.「いい人」ほど安全になりにくい理由
ここで少し踏み込みます。
慢性痛を抱える方には、
ある共通点があります。
真面目
責任感が強い
人に迷惑をかけたくない
期待に応えようとする
つまり、
他人指向でがんばれる人です。
問題は、その優しさが
神経を常に緊張状態にしてしまうこと。
本当は疲れていても、
「まだ大丈夫」
「これくらい普通」
「弱音を吐けない」
と自分に言い聞かせる。
すると体はこう感じます。
「本音が出せない環境=安全ではない」
安全とは、
「怒られないこと」でも
「失敗しないこと」でもありません。
力を抜いても大丈夫な状態です。
4.痛みは“ブレーキ”でもある
ここで視点を変えてみます。
痛みは警報であると同時に、
ブレーキでもあります。
これ以上無理をするな
立ち止まれ
自分を守れ
慢性痛は、
体が最後に使う強いメッセージかもしれません。
そして重要なのは、
痛みを無理に消そうとすると、
神経はさらに警戒を強めることがある、という事実です。
5.では、どうすれば安全になるのか
体が安全を感じる条件は、
意外とシンプルです。
呼吸が深い
筋肉がゆるんでいる
心拍が落ち着いている
「ここにいていい」と感じられる
これらはすべて、
内受容感覚を通して脳に伝わります。
前回お話しした「翻訳機」が、
こう報告します。
「今、危険はない」
この報告が増えていくと、
脳は徐々に警戒レベルを下げます。
すると——
痛みのボリュームが変わり始めます。
6.安心は“外”から与えられることもある
大切なことをひとつ。
自分ひとりで安心を作れない時もあります。
誰かに受け止めてもらう
否定されない空間にいる
体にやさしく触れられる
こうした体験は、
神経に直接「安全」を教えます。
言葉よりも先に、
神経が理解します。
「ここでは戦わなくていい」
慢性痛の回復には、
この神経レベルの安全体験が欠かせません。
7.次回へ:翻訳精度を取り戻す
では、
内受容感覚という“翻訳機”が乱れている場合、
どう整えていけばいいのでしょうか。
次回は、
なぜボディスキャンが効くのか
なぜ呼吸だけでは足りないことがあるのか
「感じるのが怖い」人がいる理由
についてお話しします。
痛みをなくす前に、
体が安心できる回路を取り戻す。
その第一歩を、
一緒に丁寧に見ていきましょう。
静岡・沼津・三島・函南のこころねセラピー:秋山幸徳


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