――脳は「安全」になるまで、痛みを手放さない
1.痛みが続く人に共通する、ある感覚
「検査では異常がないと言われた」
「治療を受けても、その場では楽になるけれど、また戻ってしまう」
「理由が分からないまま、何年も痛みと付き合っている」
慢性痛を抱える方から、こうした言葉を聞くことは少なくありません。
ここで、ひとつ大切な問いを投げかけてみます。
あなたの体は、最近“安心”していますか?
この問いに、すぐ「はい」と答えられる人は、実は多くありません。
2.脳にとっての痛みの役割
私たちはつい、
「痛み=悪者」「消すべきもの」
と考えてしまいがちです。
けれど脳にとって、痛みはとても重要な防御反応です。
・危険から身を守る
・無理を止める
・注意を向けさせる
痛みは、体を壊すためではなく、守るために出ています。
そして慢性痛の場合、脳はこう判断しています。
「まだ安全とは言えない」
「警戒を解くには早い」
つまり、痛みが続く背景には、
**脳が“安心できていない状態”**があるのです。
3.安心とは「気持ちの問題」ではない
ここで誤解してほしくないのは、
安心とは「前向きに考えること」や
「気の持ちよう」ではない、ということです。
脳が判断する安心とは、
体の内側の情報から作られます。
・心拍は落ち着いているか
・呼吸は浅くなっていないか
・内臓は緊張していないか
・体は常にこわばっていないか
こうした情報をまとめて、脳は問い続けています。
「今、この体は安全か?」
この判断材料を届けているのが、
内受容感覚です。
4.内受容感覚は「体の状態を翻訳する装置」
内受容感覚は、
心拍・呼吸・内臓・自律神経など、
体の内側の状態を脳に伝える感覚です。
言い換えるなら——
体の状態を、脳が理解できる言葉に翻訳する装置。
ここで大事なのは、
👉 体の状態は「元気さ・しんどさ(エネルギー量)」に直結している
という点です。
内受容感覚が伝えるのは、
「ここが痛い」という局所情報だけではありません。
- 今、体は消耗しているのか
- 余裕があるのか
- 緊張が強いのか
- 休めているのか
こうした全体の調子です。
5.慢性痛では「翻訳」がうまくいかなくなる
慢性痛の多くで起きているのは、
体 → 脳への翻訳エラーです。
体はこう訴えています。
「もう限界に近い」
「ずっと緊張している」
「休ませてほしい」
けれどその声がうまく翻訳されないと、
脳はそれを**「よく分からない不快な信号」**として受け取ります。
意味が分からない信号ほど、
脳はそれを危険視します。
結果として——
警戒を解かず、痛みを出し続ける。
これが、
「治っているはずなのに痛い」
「原因が分からないのに苦しい」
慢性痛の正体です。
6.だから「安心」が先に必要になる
多くの人は、
「痛みがなくなれば安心できる」
と思っています。
けれど、慢性痛では順番が逆です。
安心できる状態が先に来て、
その結果として痛みがほどけていく。
これは甘い考えでも、精神論でもありません。
脳の仕組みとして、
安全が確認されない限り、
痛みのスイッチは切れないのです。
7.次回へ:安心は、どうやって体に伝えるのか
では、どうすれば
体と脳に「安心」を伝えられるのでしょうか。
それは、
無理に痛みを消すことでも、
気持ちを押し込めることでもありません。
次回は、
内受容感覚の翻訳精度を回復させる視点から、
・なぜ力を抜こうとしても抜けないのか
・なぜ休んでも回復しないのか
・なぜ「頑張り屋さん」ほど痛みを抱えやすいのか
をお話しします。
痛みを敵にしないために。
体の声を、もう一度きちんと受け取るために。
▶︎ 第2回「体はいつ“安全だ”と判断するのか」
静岡・沼津・三島・函南のこころねセラピー:秋山幸徳


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