※この記事は、慢性的な虚しさや心身の不調を抱えながらも、日々を必死に生きている方に向けて書いています。心理学者ヴィクトール・E・フランクルの思想を、こころねセラピーの視点でやさしく解説します。
毎日、きちんと生活している。
家族もいる、仕事もある、大きな不満があるわけでもない。
それなのに──
夜、ふと一人になると、言葉にできない虚しさが胸の奥に広がる。
こころねセラピーに来られる方、とくに慢性的な痛みや疲労を抱えながら、必死に日常をこなしている中年女性の多くが、この感覚を抱えています。
「私は怠けているわけじゃないのに」
「もっと感謝しなきゃいけないのに」
そう自分を責めながら、虚しさにフタをして生きてきた方も少なくありません。
今日は、その正体不明の虚しさを、心理学者ヴィクトール・E・フランクルの視点から、こころねセラピーの立場で丁寧に読み解いていきます。
人は「意味」を必要とする存在|こころねセラピーの臨床から
フランクルはこう語っています。
人生には意味があるのだと知っていることほど、
最悪の条件にあってすら
人間を立派に耐えさせるものはほかにありません。
彼はナチスの強制収容所を生き延びた心理学者です。
『夜と霧』で知られる彼の心理学は、**机上の理論ではなく、極限状態で鍛えられた「生の心理学」**です。
こころねセラピーでも、はっきり感じることがあります。
人は「楽になれば救われる」のではない。
「意味を感じられたとき」に、初めて生きる力が戻る。
実存的空虚とは何か|理由のわからない虚しさの正体
フランクルは、人生の意味が見えなくなった状態を
**「実存的空虚(existential vacuum)」**と呼びました。
実存的空虚には2つのタイプがあります|急性型と慢性型
① 急性型
・大切な人の死
・病気や事故
・失職や倒産
理由がはっきりしている虚しさです。
悲しみや絶望が前面に出るため、周囲も気づきやすい。
② 慢性型(こころねセラピーで多いタイプ)
・特別な不幸はない
・むしろ「普通に幸せ」なはず
・でも、なぜか毎日が空虚
朝起きて、家族の世話をして、仕事に行き、帰宅して眠る。
それを繰り返す日々の中で、
「私の人生、このままで終わっていいの?」
という感覚が、静かに心を侵食していきます。
これは甘えでも、わがままでもありません。
人間の根源的な動力は「意味への意志」|痛みの奥にある心理
フランクルは明言しています。
自分の人生に意味を見出そうとする努力は、
人間の内なる根源的な動力なのです。
こころねセラピーの臨床でも、
慢性痛や不調が長引く方ほど、
・自分の役割を終えた気がする
・もう必要とされていない気がする
と感じているケースが多くあります。
身体の痛みの奥に、「意味の喪失」が横たわっている──
これは決して珍しいことではありません。
強制収容所で明らかになった「心の強さの正体」|使命を持つ人
フランクルは、収容所で一つの重要な事実に気づきました。
満たすべき使命が自分を待っていることを知っている人ほど、
その状況に耐えることができた
過酷な環境に耐えられた人と、心が折れてしまった人。
その違いは、**体力でも性格でもなく「使命の意識」**だったのです。
フランクル自身にとっての使命は、
奪われたロゴセラピーの原稿を
もう一度、書き直すことでした。
死と隣り合わせの状況でも、
「まだ自分にはやるべきことがある」
この感覚が、彼を生かし続けました。
安定よりも「意味ある緊張」が人を生かす|フランクルの核心
ここで、非常に大切なフランクルの言葉があります。
人間が本当に必要としているものは、
緊張のない状態ではなく、
彼にふさわしい目標のために努力し、苦闘することなのです。
こころねセラピーでは、
「リラックスしなきゃ」「力を抜かなきゃ」と
自分を追い込んでしまう方が多くいます。
しかし──
意味を失ったリラックスは、心を空虚にするだけなのです。
使命を持つ人生は、決して楽ではありません。
悩み、迷い、傷つくことも増えます。
それでも、
「これをやらずに終われない」
という感覚が、
人の心に芯を通します。
虚しさは「可能的意味」からの呼びかけ|見逃されがちなサイン
夜、眠る前にふと湧き上がる虚しさ。
それは敵ではありません。
フランクルは、それを
「あなたにしかできない意味が、未来で待っている」
という呼びかけだと考えました。
使命に気づくかどうか。
行動するかどうか。
それは強制ではなく、
あなた自身の自由な選択です。
こころねセラピーからのメッセージ|この虚しさを一人で抱えないで
▶ 読み終えた方へ
もし、この記事を読みながら
- 「まるで自分のことを書かれているようだ」と感じた
- 虚しさや痛みの理由を、はじめて言葉にしてもらえた気がした
- もう少し、自分の人生の意味について話してみたいと思った
そう感じたなら、それはあなたの心が発している大切なサインです。
こころねセラピーでは、
症状を急いで変えることよりも、人生の意味や価値を丁寧に言葉にする時間を大切にしています。
- 慢性痛や不調がなかなか改善しない方
- がんばっているのに報われない感覚が続いている方
- 宗教ではない形で、スピリチュアルな支えを求めている方
どうぞ一度、あなたのお話を聞かせてください。
こころねセラピーは、
・正解を押しつけません
・無理に前向きにさせません
・宗教的な信仰を強要しません
ただ、
あなたの人生に、まだ残されている「意味の芽」を
一緒に見つめる場所です。
痛みも、虚しさも、
あなたが弱いからではありません。
意味を求める心が、
まだ生きている証です。
使命を意識することは、
心を強くします。
それは、
「がんばり続けること」ではなく、
「自分の人生を引き受ける覚悟」を
取り戻すことなのです。


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